富山市荒川地内のゲンジボタル


◆富山市荒川の住宅地にホタルが生息
2019年6月4日夜、近くに住んでいながらほとんど通ることの無い踏切(富山市荒川1丁目の荒川第一踏切)をたまたま自転車で通りかけた時にゲンジボタルが飛んできました。足元にはコンクリート用水、ここにホタルが生息してるはずなく、常西合口用水上流から流されてきたか…とその日は思いました。翌夕、まさか&もしやと思いつつ同じ踏切に行けば何と4〜5匹の発光、信じられないことに田んぼも無いこんな住宅地にゲンジボタルが棲んでいることが分かりました。それから数日観察、オスメス合わせて20匹程度の光を確認しました。決して多い数ではありませんが間違いなくここで生まれ育ったのでしょう。住宅地の脇を流れる用水にホタルが光り、その真横を地鉄本線の電車が轟音ともに走る…何とも不思議な空間です。富山駅や市役所からたった3q弱の距離、奇跡的な場所です。なお、2019年は6月17日に地鉄線路側が除草され、以降ホタルの光は減少、25日には4匹が光だけとなりました。6月上〜中旬が見頃と思われます。なお、この場所ではゲンジボタルのみでヘイケボタルは確認できていません。

富山市荒川1丁目のホタル

〔富山市荒川1丁目のホタル 2019年6月撮影 中央赤い光は地鉄踏切の警報器の灯り 1カット撮影〕

富山市荒川1丁目のホタル
〔2019年6月撮影 1カット撮影〕
富山市荒川1丁目のホタル
〔2019年6月撮影 地鉄電車など6カット合成〕

〔富山市荒川1丁目のホタル…動画 2019年6月撮影 踏切警報器音あり〕

◆奇跡の80メートル
荒川1丁目のホタルの生息域は、下図マップの地鉄本線沿いの用水Aの約80メートルの区間だけと推測しました。コンクリート護岸の用水ではホタルはほぼ棲息無理と言われています。本文を書く数日前にも富山市ファミリーパークで「呉羽丘陵にホタルを呼ぶ会」が小学生のカワニナ放流体験でその様に説明する報道がありました。でも、このコンクリート用水の約80メートルの区間には現実にホタルが棲んでいます。何回かの観察と周辺の視察で「奇跡の80メートル区間」の存在を次の様に考察しました。

富山市荒川1丁目のホタル棲息地と2つの用水

〔富山市荒川1丁目のホタル棲息地と2つの用水 (C)google〕

  1. 一年365日途切れない清流
    ホタルが棲む用水Aは水が止められて渇水することがありますが、1年を通して水が流れている用水Bの水が用水Aとの合流点からホタル棲息域に逆流してると思われます。用水ABともに水源は常西合口用水、つまり常願寺川の上流はるか立山町横江から引かれた清澄な水です。

  2. カワニナも棲息
    用水Bには至る所でカワニナが転がっているのを肉眼で確認できます。前述の様に用水Aの水が止められてもホタル棲息域の80メートル区間に用水Bの水とともにカワニナの仔貝も流れ込んでいると思われます。田植え期〜夏季は小魚も多数泳いでいます。

  3. 江浚い(えざらい)が無い
    荒川地内は昔は水田が多かったのですが今は皆無、家庭菜園レベルの畑が点在する程度です。そして用水Aは江浚い(農家総出で行う農業用水の清掃)がされてない様に思えます。つまり、用水Bとの合流地点まではカワニナの餌となる草の葉が溜まり易くなっています。さらに用水のコンクリートの側面にも藻が生えたままとなり、ホタルの幼虫の水陸間移動が可能になっています。

  4. 雑木と雑草
    奇跡の80メートル中央の踏切から東側に空き家が1軒ありその裏に雑木が数本あります。その根元あたりがホタルの産卵床に適した雰囲気を持っています。また住民の方々はご自分の敷地の除草はされても用水の線路側までは除草されません(電車が危険)。西側のマンションでもそうです。結果、この80メートルは適度に除草されず草が茂っています。

  5. 灯りが少ない、人間も干渉しない
    地鉄本線の電車の走行音はかなりの騒音です。乗客からの視線もあり、沿線住民の方は地鉄線路側の窓は閉めた切りにされている場合が多い様です。窓を開けないからホタルが嫌がる余計な灯りは少なめです。また、用水の北側は宅地の敷地で南側は線路と、人が侵入しにくく、結果ホタルは放置されたままとなります。

  6. 奇跡の80メートルの範囲外は?
    用水ABともに上流側は草は除草されるか生えない状態でホタルが棲むのは困難です。また下流側はたまたまそこへ飛翔しただろう個体以外は確認できず、テイカ製薬西側からは新しいコンクリ護岸となり、ホタルが棲むには絶望的環境です。やはりこの約80メートルは奇跡の区間としか言い様ありません。

富山市荒川1丁目のホタル棲息地3D俯瞰
〔富山市荒川1丁目のホタル棲息地3D俯瞰図 (C)google〕
奇跡の80m中央部から西側
〔奇跡の80m中央部から西側〕
踏切西側
〔荒川第一踏切西側の適度な雑草〕
奇跡の80m中央部から東側
〔奇跡の80m中央部から東側〕
雑木と適度な雑草
〔雑木と適度な雑草〕

◆今後はどうなる?
80メートル区間東側、空き家が今後どうなるか、また以前は倉庫があった場所の更地が今後どうなるか、この2点が気になるところです。たとえば空き家裏の雑木が無くなると産卵場所が無くなる恐れがあります。新しい建物もしくはアスファルトの駐車場等が用水ギリギリで作られると飛翔空間もかなり狭くなります。しばらく観察を続けたく思います。(2019年7月)

◆2020年の観察から
2020年春は用水に異変あり、用水Aの渇水期に用水Bの水量が乏しく奇跡の80mがほとんど干上がってしまう事態となりました。田植えの季節後に両用水の水は戻ったものの、ホタルは絶滅したのではと心配しておりましたが、奇跡の80m地点で6月9日に1匹、10日に4匹、15日に8匹の明滅を確認できホッとしました。そして12日に新たな発見がありました。地鉄新庄田中駅から観察地点に向かっている途中で、地鉄の線路を潜って西新庄から田中町2丁目に流れている用水にホタル2匹を確認しました(15日は1匹)。さらに用水Bを遡ってみたところ荒川2丁目でホタル3匹(15日は1匹)を確認しました。ゲンジボタルの飛翔範囲は棲息場所で異なるものの50〜300mくらいもあるらしいので幼虫時代をどこで過ごしてるのかははっきりしませんが、ホタルなんて居ないと思い込んでるのは人間(=自分)が調べていないだけであり、実際のホタルは密度こそ低いものの、荒川〜西新庄〜田中町の広範囲に棲息している可能性もある様に思えてきました。今後は可能なら観察する範囲や時間帯を拡大したいと思います。(2020年6月)

荒川2丁目〜田中町2丁目にもホタル棲息を確認
〔荒川2丁目〜田中町2丁目にもホタル棲息を確認 (C)google〕

◆2021年の観察から
2021年1月の記録的豪雪が原因か不明ですがホタルが少なかったです。特に用水Aで激減して2〜3匹しか観られず、2021年のメインエリアは用水Bとの合流点付近となりました。5月27日に1匹の光を確認、6月2日に1匹明滅、4日3匹明滅、7日に6匹飛翔あり、8日6匹、11日9匹飛翔あり、12日10匹飛翔盛ん、15日5匹、17日4匹、21日ゼロ、23日3匹。今年のピークは12日頃だった様です。他地点では田中町2丁目で1匹1回、荒川2丁目で1匹3回。ゲンジボタルの飛翔範囲50〜300mとすれば、やはり用水AB合流点が繁殖場所に思えます。今年は荒川第一踏切南側にホタルを観に来ていらっしゃるご家族を見掛けました。此処にホタルが棲息していることを知る人が増えることがホタルにとって良い方向に繋がればと願います。(2021年6月)

2021年のホタル確認範囲
〔2021年のホタル確認範囲 (C)google〕

◆2022年の観察から
2022年は前年ほどの豪雪は無いものの何度も大雪があり心配な状況でしたが、この4年間の観察で最も数が多かったです。6月1日 用水Aで2匹(2022年初確認)、2日 用水Aで1匹、3日 用水Aで1匹、5日 用水Aに2匹とBに2匹、7日 用水A3匹うち1匹飛翔とB1匹、8日 用水Aで2匹+用水B合流下流で4匹+用水B上流1匹+2丁目で1匹+飛翔1匹、9日 用水Aで6匹、10日 用水Aで7匹、13日 用水Aで5匹+用水Bで3匹&下流で2匹、14日 雨の中で飛びまくり用水Aで7匹+用水B合流部付近に10匹さらに下流5匹…20匹超は2019年からの観察で初、16日 12匹よく飛んだ、20日 用水Aで2匹+Bで4匹+2丁目で1匹、22日 用水AB合わせて4匹+2丁目に1匹、23日 用水Aで1匹のみ、28日 用水Aで1匹のみ、29日 用水Aで1匹のみ(最終観察日)。今年も荒川第一踏切付近で、ホタルを観に来ていらっしゃる方が何人かいらっしゃいました。。(2022年7月)

◆ホタルの記憶
昭和40年代前半までの荒川地内ではホタルは珍しい昆虫ではなく、田んぼには普通に飛んでいて、家の庭にも迷いボタルがやってくるほどどこにでも棲んでいる虫でした。特に新庄中学校西側に流れていた用水にはうじゃうじゃ居て、未就学の幼児だった自分でも素手で捕まえてた記憶があります。それが小学校4年生の夏からパッタリと見掛けなくなりました。ちょうどその頃からカブトムシやクワガタムシも激減した様に思います。立派な道路が通り、農業用水がコンクリートで作り直され、田んぼのハサギが無くなり、宅地造成が進み・・・住んでいる町自体の様子が変わったのです。ホタルの光を見つめていると遠い幼年期〜少年時代の夏の記憶が蘇ります。絶滅したと思っていた荒川地内のホタルが、この80メートル区間に棲んでいたとは奇跡にしか思えません。今後も頑張って生命を繋ぎ続けて欲しいです。

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( 2019年6月 記載 )  

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