いたち川のホタルと「螢川」
- ◆市街地すぐ近くに生息するホタル
- 小説「螢川」の舞台である「いたち川」には本当にホタルが棲んでいます。それも富山市中心部の富山市役所から直線距離にして3.5q、実距離5q程度の場所です。人工的に飼っている動物園や遠く離れた郡部や山間山沿いまで行かずともホタルを観られるのです。地方都市とは言え県庁所在地でこれはなかなか無いことでしょう。
〔いたち川、太田新橋付近のホタル 2016年6月〕
- ◆いたち川のホタル棲息場所
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草島線に掛かる清流橋〜北陸自動車道の間に多く棲息している様です。清流橋から上流は護岸が低く昔ながらの川の様相で、ホタルの産卵床となる苔類が水面近くに生え、ホタルが身を隠せる草木も増えるからと思われます。清流橋から下流でも数は少ないものの、大泉のどんどこ〜県道3号有沢線のいたち川橋あたりでも注意して観察していればたまに観ることができます。しかし、護岸がしっかりし過ぎてるどんどこ以北の水神橋から下流ではまず観られないと思います。
〔いたち川でホタルを観察し易いエリア〕
- ◆いたち川のホタル観察ポイント
- 地鉄上滝線の橋から南はいたち川沿いの道が少なくなるため、「橋」がホタルの主な観察ポイントとなります。下流から順に・・・。
- 馬頭観音の大榎あたりの橋
観察できる最下流部と言ってよいと思います。最盛期近くでなければ期待できませんが、数が少ない飛翔もそれなりの趣ありです。2021年6月現在、馬頭観音〜清流橋間が護岸整備され、ホタルにとっては生息が絶望的環境となりました。
- 草島線「清流橋」
富山市体育館からジョギングでいたち川を遡り片道6q弱、私の観察定番ポイントです。主に上流側を観ます。交通量多い草島線からホタルを観られるのは奇跡に思えます。
- セントマリー教会近く「太田新橋」
城南交通さんの駐車場近くです。上流方向下流方向ともに楽しめます。田園に囲まれた新興住宅地で、歩道もあり真っ暗にもならず安全で個人的には一番のお奨めです。運が良ければ乱舞も期待できるポイントと思います。本ページの写真と動画もここで撮影しました。清流橋でホタルが少ない場合、支流の筏川とこの橋をジョギングで巡ってホタルを探し、ついつい15q近くジョギングすること多々です(笑)。2021年6月現在、すぐ横に保育園の駐車場が整備されかなり明るい外灯が2基も設置、ホタル観察には少し残念な状況です。
- 県道65号「いたち川橋」
大阪屋ショップ本郷南店近くです。橋付近は交通量多いため安全に十分な注意が必要です。右岸南側に僅か数メートルですが砂利道あり、ここから後述の乱舞が期待できるいたち川の支流に行けます。2021年はゲンジボタルの少ない年でしたが、7月以降いたち川橋近辺でヘイケボタルが多く楽しめました。2022年6月28日にいたち川橋〜刀雄神社裏でゲンジの乱舞を観られました。ゲンジボタルのピーク、いたち川はやはり他の場所より1〜2週遅い様です。
- 県道56号「太田橋」
浮田家やラーメン店「鼓」近くと言えば分かりやすいでしょうか。交通量多く歩道が無いので個人的にはあまりお奨めできません。
- 太田橋上流の徒歩専用の橋
行き方が分かりにくいですが、太田南町の公園や公民館がある側から回ると良いです。なおここから上流にもホタルは居るとは思いますが、市内から気軽に行ける範囲を超えますので、南限はここまでと致します。
- ◆いたち川のホタル観察の季節・時間帯
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ゲンジボタルが6月〜7月上旬、ヘイケボタルが7月上旬〜8月初旬です。7月初めに除草が実施され、その直後はゲンジボタルが激減しますが、中旬からヘイケボタルが主役となります。ヘイケボタルはゲンジボタルに比べると光が弱く明滅間隔が短いのが特徴です。時間帯は20時〜21時過ぎが明滅や飛翔のピークです。その後一旦減り23時〜0時くらいにまた増える様に思えます。また、同じ時間帯でも光が少ない日もあれば乱舞と言って良い日もあり、居ない少ないからとあきらめず何度か観に行くと良いと思います(市街地から近いので容易に観に行けますので)。
〔いたち川、太田新橋付近のホタル…動画 2016年6月〕
- ◆いたち川のホタル観察の注意事項
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蚊がいますので虫除けを肌に塗ってからお出掛けを、殺虫剤持参現地噴霧は本末転倒です(笑)。住宅地の夜ですので声は控えて静かに観察して下さい。郊外とは言え違法駐車厳禁です。あと、ホタルを呼び出す車のハザードランプを使う荒技がありますが、住宅地や交通量多い道路なので絶対に使わないで下さい。
- ◆小説「螢川」のラストシーンは、いたち川のどの辺りか?
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あくまで作者の心の情景なので場所は特定できませんが、主人公の竜夫はまだ中学生、さすがに旧大山町までは歩かなかったと勝手に判断しつつ、馬頭観音よりも上流域、やはり本郷町と太田の境界、つまり前述の観察ポイント付近だったのでは?と想像しています。刀尾神社裏手あたりなどは鬱蒼として正にここだったのでは?と思えるほどです。
- ◆いたち川支流のホタル乱舞
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県道65号「いたち川橋」下手でいたち川に合流している支流のホタル密度はかなり高く、県道65号の南側・刀尾神社側で「乱舞」を何度か見ました。多数のオスホタルが一斉に飛び同じタイミングで明滅する様子は正に幽玄でした。いたち川流域のゲンジボタルは他の場所より1週間ほど遅い夏至頃に乱舞を期待できると思います。この支流を遡った浮田家付近にもホタルは多数居ます。
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- ◆いたち川のホタルを観に行くきっかけ
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いたち川ランニングクラブ2010年8月の定期練習会は自分が幹事で「いたち川完全走行」を企画し、いたち川の常西合口用水分流点〜神通川合流点を走りました。その時にクラブ員のKさんご自宅で給水をもてなし頂き、同時に「ホタルならウチの近くに居るよ」とお教え頂いたのがきっかけです。Kさん宅はまさに田園と住宅地の境界、ホタルがいて不思議はなくいつか観られたらと思いました。とは言え、やはり「たかが」ホタルでありまして、たまたま付近を通る機会ごとの観察となってしまい、翌年から4年掛かりで前述のポイントで数匹ずつを確認し「細々と頑張ってるな〜」が毎夏の印象でした。しかし、2015年に奇跡的に乱舞と遭遇、車がビュンビュン走ってる草島線の橋から多数のホタルの光を見て考えが変わり、体育館からこのポイントまでの往復が季節限定ながらも日々のジョギングコースの一つとなりました。
〔いたち川、太田新橋付近のホタル…動画(2) 2016年6月〕
- ◆ホタルの記憶
- 昭和40年代前半までの自宅周辺ではホタルは珍しい昆虫ではなく、田んぼには普通に飛んでいて、家の庭にも迷いボタルがやってくるほどどこにでも棲んでいる虫でした。特に最寄りの中学校横を流れる用水にはうじゃうじゃ居て、未就学の幼児だった自分でも素手で捕まえてた記憶があります。それが小学校4年生の夏からパッタリと見掛けなくなりました。ちょうどその頃からカブトムシやクワガタムシも激減した様に思います。立派な道路が通り、農業用水がコンクリートで作り直され、田んぼのハサギが無くなり、宅地造成が進み・・・住んでいる町自体の様子が変わったのです。ホタルの光を見つめていると遠い幼年期〜少年時代の夏の記憶が蘇ります。とは言え、ホタル観察の企画や郊外のホタルの里などにわざわざ出かけるなんて面倒で…そんな中、いたち川のホタルは身近なだけにとても貴重で、今後も頑張って生命を繋ぎ続けて欲しいです。
( 2016年6月 記載 )
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